代表挨拶

この度、医療に新しいツール…幹細胞治療・幹細胞培養上清液治療(以下、本療法)が加わりました。

本療法はこれまでの医療を一変させるポテンシャルを有する大変有望な治療法であることは疑いの余地がありません。

治療の幅と深さを大きく広げてくれます。

実際、臨床の現場ではこれまで不可能と考えられていたことを可能になってきました。

しかも安全に。

しかし、過大評価は厳に慎まなくてはなりません。本療法に対する誤解・失望に繋がります。

逆に、過小評価もいけません。機会喪失(せっかく良くすることができるのにトリートメントしないこと)につながるからです。身の丈に合った評価が必要です。

ところで、ひとことで「幹細胞を使った治療」と言ってもたくさんのサブタイプがあるのをご存知でしょうか?

由来する組織(例えば骨髄由来なのか?臍帯由来なのか?)によっても、細胞培養法によってもそれぞれの性質は違っています。

それぞれの治療マテリアルごとの適正な評価、つまり効力を発揮できる分野・効力の弱い分野を明らかにすることは当然の課題です。

また、もっともパフォーマンスが良い投与ルート・投与量・投与スケジュールを見出すことも臨床の現場では重要な課題です。

また他の治療法との併用も大いに探究すべきテーマです。

本療法単独で治療するよりも、複数の治療法を組み合わせることでより素晴らしい効果が発揮されること期待できからです。

その際、単純に治療法を足し算すればよいわけではありません。

各治療法の長所・短所を熟知し、組み合わせの強弱を自在にコントロールする能力・医療技術があってこそ最大のパフォーマンスが生まれます。

本治療を最大限活用するためには、本治療だけではなく他の治療法にも精通していなくてはなりません。

一方、実際の治療においては「一人ひとりの患者さんに合った」本治療の適正な使い方を見出すことが肝要であることは言うまでもありません。

とはいえ、最適な治療法は患者さん一人ひとりで違います。

なぜなら患者さんは誰ひとりとして同じではないからです。

100人の患者さんがいれば100通りの治療法を考えなくてはなりません。

はじめに「患者さんが求めているのはなにか?」に熱心に耳を傾けその思いを共有し、与えられた条件(コストの条件も含む)の中で最適解を求めることは当然です。

しかし「言うは易く行うは難し」であり、その方にジャストフィットする解を見出すのは至難の業です。

我々の学会はこの難問に立ち向かいます。

・一つ一つ大切に症例を積み上げ、そこから謙虚に学び次の治療につなげます。

・臨床と学術がタッグを組み、病態および治療機序を解明し新たな治療法を開発します。

・世界中のドクターの知識を集結します。

幸い海外には日本よりは本治療の歴史が深い国があり多くのことが学べます。

国際的に知識を共有することで、研究が飛躍しあらたなアイディアが生まれます。

繰り返しですが、本治療のポテンシャルは未知です。

学会会員の先生方、患者さんからの積極的なご意見が本療法を清く正しく育てる原動力になります。

是非、活発かつ忌憚のない意見をお待ちしています。

本療法を大きく育て、そこから得られるたくさんの果実を患者さんに「正しく・わかりやすく」お届けすることが我々の責務です。

2023年9月
学会を代表して
三浦哲哉 拝